こんにちは。ハジイチです。
あなたは「家族信託」についてどこまでご存知ですか。
ご両親が認知症になってからでは、手遅れです。
目次
家族信託とは
家族信託とは、簡単にいうと認知症による財産凍結問題を解決してくれる財産管理手法です。
両親が認知症などで判断力が衰えると、財産が凍結されることがあると知っていますか?
定期預金を解約出来なくなったり、不動産が売却出来なくなったり。
こうした困りごとを避けるために、元気なうちに家族に財産管理を任せる「家族信託」が注目されています。
なぜ元気なうちに「家族信託」の手続きをした方が良いのでしょうか。
認知症高齢者の現状
①介護保険制度を利用している認知症高齢者(日常生活自立度Ⅱ 以上)約280万人
②日常生活自立度Ⅰ又は要介護認定を受けていない人約160万人
①+②=認知症有病者 約440万人、(全体の15%)(認知症)
➡2025年には約700万人に!?(厚労省の推計)
③MCIの人(正常と認知症の中間状態の人)約380万人(認知症予備軍)
(注:MCIの全ての者が認知症になるわけではないことこに留意)
65才以上人口 = 3, 186万人
65才以上約440万人(認知症有病者)+ 予備軍 約380万人 = 約820万人
➡65才以上の4人に1人が認知症を発症する可能性あり!
日本は高齢者が増えると同時に、認知症発症者が増えると言う不安もあります!
もし両親が認知症を発症してしまったらどうすればよいのか。
介護の相談先は・・・
- 地域包括支援センター
- ケアマネージャー
- 各種施設
- 療養型クリニック
介護の費用については・・・
誰に相談すれば良いのか?
- 預金?
- 保険?
- 不動産を処分?
介護費用を工面する子どもにとっては大変大きな問題です。
あなたはご存知ですか?
(家族信託普及協会によるアンケートより)
①親が認知症になった場合、銀行口座が凍結され、家族でもお金を引き出すことはできません。
②親が認知症になった場合、土地の売買などの契約行為はできません。
空き家の現状
空き家の原因
空き家は現在、全国で約14%、東京都内で約10%にもなります。
そして、所有者の約50%は相続にいたっていない方々です。
大きな原因の1つは、自宅をそのままにして老人ホーム等へ移り、認知症等になったために誰も自宅の手続きができなくなることです。
このとき、認知症によって意思能力が失われる前に、財産の管理・運営・処分に関する権限を子どもに委託することで、財産の事実上の凍結を防ぐことができるのです。
こうすることで、子どもは親の財産を活用して、介護費用を工面することもできるようになります。
家族信託を導入前に知っておくべき、商事信託と民事信託の違い
信託という言葉から、「○○信託銀行」を思い浮かべる方が多いかと思います。
しかし、○○信託銀行の役割(商事信託)と民事信託は、全く異なります。
商事信託(※家族信託ではありません!)
信託会社や信託銀行が財産の所有者(委託者となる)から財産を託され(受託者となり)、管理や承継を行います。
このとき信託会社や信託銀行は、営利目的で「信託報酬」を受け取ります。つまり手数料が発生します。
ココに注意
※商事信託財産は、委託者が認知症になった場合に他の資産同様に凍結されてしまいます。
民事信託(俗称:家族信託)
財産の所有者(委託者となる)の家族や親族など信頼できる人が財産を託され(受託者となり)、管理や承継を行います。
平成18年12月の信託業法改正により、営利目的でなければ、信託業免許を持たない法人や個人間においても、受託者になれるように変更がなされています。
ココに注意
※民事信託された資産は、委託者が認知症になった場合でも、凍結せず受託者が代わりに手続きできます。
家族信託の導入のタイミングはいつが良いのか?
- 第一段階(生前):現在お元気な状態→家族信託の理想導入タイミング
- 第二段階(生前):体調・意識の変化→家族信託の最終導入タイミング
- 第三段階(生前):認知症、寝たきり等判断能力の喪失→家族信託の導入できない
- 第四段階(亡くなった後):相続の手続き(下記)
・信託銀行の手続き
・相続の分割協議
・遺言書の開示
・生命保険の受取
・不動産の処分
・納税
家族信託の導入をしないまま、認知症や重度の寝たきりになった場合
何もしない場合
- 銀行窓口での手続は出来ないが、キャッシュカードでの現金出し入れ手続きは今のところ大丈夫。
(指紋認証の普及など、今後はわからない。) - 病院・施設において毎月の引き落としが止まる事は考えづらいが、入居一時金等のため、定期預金を解約する等の、銀行窓口での手続きはできない。
- 本人名義、または本人を含む共有名義で、空き家となった場合は、相続が終わるまで空き家のまま、原則何もできない。
成年後見制度(せいねんこうけんせいど)に基づいて成年後見人が選定された場合
- すべて成年後見人しか手続きできない。
- 家族に手続きの権利はない。
- 成年後見人は本人の財産を守る(減らさない)ことが主軸となる。
- 裁判所の判断が降りない限り、本人の財産に手をつけることはない。(預金が底をつき不動産を処分しないと費用が払えない等)
MEMO
成年後見制度とは、広義には日本における意思決定支援法制をいう。つまり、人の意思能力が低い状態がある程度の期間続いている場合に、本人の判断を他の者が補うことによって、本人を法律的に支援するための制度をいう。
成年後見人とは、日常生活をひとりで送ることが難しいほどに判断能力が低下している人をサポートする人。
家族信託を契約していたら・・・
- 信託用口座で委託者の介護等、目的の範囲内で、受託者が使用できる。
- 病院・施設の支払いも専用口座から捻出できる。
- 受託者の権限で売却・リフォーム・賃貸等ができる。また委託者の土地を担保にリフォーム等もできる。
成年後見制度と家族信託の違いは
成年後見制度で、本人が法的に守られているのだから、わざわざ家族信託にしなくても良いのでは?
いえいえ、そんなことありません!比較するとその違いがわかります。
成年後見制度
- 本人の資産を守ることが目的。(悪質な契約を取消せる)
- 本人の全ての資産の管理と契約行為を行う。(介護施設に入るお金を用意しなければならないとき、不動産や財産を売却できる)
- 家族への報告義務はない。
- 自由度がない、または限定的。(本人にとって必要なことにしか出費できない。)
- 成年後見人の費用がかかる。(契約金と、年間24万円~100万円程度) ※不動産売却等の際には、別途費用がかかる。
- 監督機関は家庭裁判所
後見人が本人に代わって財産を管理してくれるメリットがある一方、親族が介護のために使った費用(交通費、宿泊代など)で後見人と対立するケースもある。
家族信託
- 主に本人の介護や不動産資産の管理を目的とする。
- 成年後見制度より積極的、かつ自由度がある。
- 費用は無料。ただし専用口座の開設や不動産登記の初期費用はかかる。(目安:一般的な自宅の場合50万円~100万円程度)
※収益物件等、信託する資産の内容や数によっては費用が大きく変わる場合もある。 - 契約した目的以外の行為はできない。〈例〉年金の支払い、子供の生活費支払い等。
- 監督機関はなし。(信託監督人を付ける場合もある。)
家族信託ポイントまとめ
ポイント①介護・認知症対策
4人に1人は認知症の時代に。介護は他人ごとではありません。人生の集大成の大切な時間を、家族で協力して乗り切りましょう!
ポイント②対策のスイッチが約10年手前に
平成18年の法改正で誕生した民事信託。それにより時間軸が変わりました。信託銀行の財産分与・信託、遺言書・生命保険・相続税の納税等、相続に関することは全て、ご本人が亡くなった後に発生します。しかし家族信託なら、ご契約直後から有効、さらに数世代先まで有効です!
ポイント③家族による家族のための対策
介護の財産管理部分の対策は、今まで民間ではできませんでした。しかし家族信託により、家族が中心となり、介護・認知症に対して事前に備えることができるようになりました。親御さんがお元気なうちに家族で話しあえる制度ですので、相続の事前準備や、争続(あらそうぞく)にならないための事前対策として有効です!
家族信託が有効と思われるケース
- 認知症に対して、将来不安を持っている。または認知症の初期症状が出ている。
- 後見人制度に対して疑問を持っている。
- 空家や共有名義のアパート管理で困っている。
- 家族や親戚間で高齢者の面倒を看ている。
注意事項
家族信託は、特に制度上のデメリットというものは見受けられません。
但し、下記の項目は注意していただきたい点です。
- 相続税等の節税に直接繋がるわけではありません。
- まだ世間一般に認知されていない制度なので、銀行や保険会社の実際の手続きが出来なかったり、手間取ることがあります。
- 既に認知症になってしまっている場合や、家族間で争い状態になっている場合は対策できません。